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小池正浩
小池正浩
2023/2/19 14:00
何を表現したいのか、誰へ伝達したいのか。 気づけばひたすら黙考をしいられたというか、みずからに徹底した熟考を要求させられたというか、この半年間ほど、とにかく思考力も体力もやたら削られ無為に消耗し、これからの結果しだいではあるいは溜めこみ鍛え上げられたともいえるかもしれない不毛の日々、まあでも体感的にはあっという間の毎日でした。 総じておもうのは、現行のシステムにおける機能不全や構造的不備が、もはや誰の目にも覆い隠せも看過もできなくなってしまったくらい悪化し、いよいよ末期症状を見せはじめたのではないかという疑念とともに、SNSやマスメディアを介した情報発信者というおなじスタンスでも、リベラルと嘲られようが理想主義といわれようが断乎として現状打破に向けて戦う人間と、リアリストを自称するたんに惰性でひたすら強者の権威に迎合し既得権益に安住する現状追従型の人間とに、明確に二分されはじめたのがこれ以上ないくらい自己暴露的にもはっきりしてきたことでしょうか。混乱に乗じて商売や保身に走る者から、動揺し逃走したり迷走する者、それでも必死にあらがおうとする者まで。 あらたなフェーズへ突入した、というか。つぎつぎと勃発する国家的弾圧や侵略戦争、それら不当な暴力へのカウンターとして幾度も衝突をくりかえす無数の、無名の人々の自然発生的な抵抗やデモ、そして孤立した脱落者による自暴自棄の個人テロ。 批評の不在、不足もまた痛感させられます。あらゆる大きな物語が消滅し、有象無象の、たがいに分断され、フラグメント化しパラレルワールド化した小さな物語が大量に生産され拡散され消費される時代とはいえ、だからこそ、それらシステマティックな制度と対峙する、無意識に縛りつけ方向づける流れに対抗する力が求められているはず。いまこそ文学的にだけにとどまらず政治的にも、カウンターとしての批評が。 真正面からでなくとも持続的でなくとも、何回も何回も逡巡して立ち止まり、ときどき引き返し、やりなおしたっていい。まちがってもいい。かならずしも前へ進まなくても、べつに後ろ向きであってもいい。100%正しくなくてもいいし、速くなくとも固くなくとも。誰かを論破する必要も、何かに有益である必要もない。強い意志である、意味がある必然性はない。弱く、軽く、柔らかくあってもいい。ただ否定せず受け容れること、自分と世界と他者を。
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