タイトルも秀逸
喰ウ寝ルさんの作品は何作か読ませて頂きました。今回も鮮烈な作品でとても驚きながらも、こうした作品を読めて本当に喜びを感じます。 最初の情景からシーンが頭に浮かんで、キャラクターの動きや景色や音や匂いが自然に頭で再生されて気が付いたら作中に入り込んでいる。同じように書いても、文章が映像に変わる人と、ずっと文字を追ってしまう人と、その違いはなんだろうかと思います。いわゆるセンスによるものなのか、日ごろ「書く側」の目線で見ても興味深く尽きない課題です。ただこの作品を読んで強く感じたのは、喰ウ寝ルさんが非常に細やかにそうしたテクニックを意識されているということでした。 ホラーやミステリーでも、コメディや恋愛ものでも、書く側は作品が読者に対してどのような感情を起こしてどのように解釈されるかを「計算」して書いているはずと私は思います。それがうまくいけばそれは感動になり感嘆になる。1ページ目から最終ページまでをどのように演出して、どのような効果を積み上げていくか。こうした試行錯誤の末に、うまく書けたかどうかが決まる。 この「やっと気づいたこと」を読んで、嫉妬したくなるほどにうまく書けた作品なのだと驚きました。ただ最後のどんでん返しが意外だから私たちが驚くのではなく、知らず知らずのテクニックの中で読まされ作者の掌の上で効果を積み上げられた結果、最後にうわあっとなるのでしょう。本当に見事です。 冒頭のくだりから始まって、細かな表現や単語に、ほんの少しだけ違和感と言うか引っ掛かるようにわざとできています。読んでいる時にはスルーしてしまうような、そういう違和感が積まれて最後にその意味が分かる。分かった時に、全部がつながっていることに感嘆する。2回3回読んで、至る所の演出に「やっと気づいた」りするのです。そういう意味で非常に上質なホラーを読ませていただいたと嬉しくなります。各所に違和感ポイントがあって、それを見つけていく、という楽しみ方もありますね。こうした作品を、ぜひ次回も読ませていただきたいと思いました。
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レビューありがとうございます。 本当に読み込んでいただいて感謝します。すごく褒めてもらって恐縮ですが、そんな大層な物語でもないですよ笑 なんとなく青春からラストに意外性があったらいいな、と思って書いた話なので。 でも確かにどんでん返しをする上で気をつけていることは、読み返したときに納得できる要素をちゃんと詰め込むっていうところなので、そこを細かく見てもらえてめちゃくちゃ嬉しいです。 僕はそれほど文章はうまくはないと思っていますし、他の人で敵わないなと思う人も多いです。 シバケンタップさんもそのうちの一人です。 最近読ませていただいたカレーライスも雪が舞うような凍える場所で温かいカレーライス
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