手慣れた職人技の妙
 私は『アムウェイ』から未苑氏の作品を読むようになったが、今回、未苑氏の作品をいくつか目を通してみて、驚くべきことに気がつく。  未苑氏の小説には、主人公をはじめ登場人物に、感情移入出来るキャラが案外少ないということである。  これは未苑氏の作品を学び、エブリスタで未苑さんの実績を目標に入賞をめざす人は是非とも覚えておくべき事柄である。  今回の作品は、未苑氏の作品論を書く場合、非常に重要なキーポイントとなろう。  男女の友情が成立するか否かは、ラノベなど若者向けの作品でも重要なテーマとなる。だが今回の作品の場合、それらとは明らかに一線を画している。  男性読者の多くは主役の男について、物欲しそうに届かぬ太陽に手を伸ばし、太陽が向こうから近づいてくるのを待つ見すぼらしいキャラとしか見えないだろう。「いい人」を装い、相手がなびくのを待つ現実の自己の姿に重ね、嫌悪感を抱く者もいるかもしれない。  実は大半の小説は、その部分で、 「何だ、この男は」 と投げ出されてしまい、顧みられることなくその運命を終える。  この作品の素晴らしさは、文章、構成の絶妙さに始まり、設定を少しずつ小出しにしながら読者の興味を引き、読者を一気に結末まで持っていく職人技にあるかと思う。  読後感を語れば、うまく作者の手の内に乗せられ最後まで引っ張られてしまい、希望に満ちた爽やかな読後感が残ったということである。  そうした意味でこの作品は、読者が自分自身を登場人物に投影して味わう作品ではなく、オー・ヘンリーのように、手慣れた職人の最高な技術で組み立てられた見事な展開と結末を楽しむ「洒落たSS」と解釈べきであろう。  例えば新聞の日曜版のSSとして掲載され、読者を楽しませる傑作と云える。  ただし、初心者は絶対に書けないし、真似してはならない。主役の男の見すぼらしさがハッキリした時点で読者に投げ出されることは間違いない。  未苑氏だからこその芸当である。  この作品は作者の職人技を余すことなく伝える傑作であると同時に、作者が今後、コンテストで入賞をめざす場合のヒントにもなっているとは思う。「エンターテイメント」として読者を満足させるか、「主役は私」の自己陶酔で読者を満足させるのか、参加コンテストの性格を見抜くことで、果てしない栄光がきっと作者を待っているかと思う。  
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倉橋様 この度も大変光栄なレビューいただき、誠にありがとうございます……! 自作には身の丈の合っていないお言葉ばかりで恐縮して、お返事の言葉を選ぶのに時間がかかってしまいました。けっして職人技と呼べるような技術は私には無いですし💦 洒落たSSと仰って頂いて恐れ多く、お返事に窮してしまいました。ご無礼をお詫び申し上げます。 そしてまた、今後のコンテストへの指針を示して下さいましたこと御礼申し上げます。 「感情移入できるキャラクターがいない」という点はとても耳が痛く、読者あってこその小説を目指す身として、いつまで経っても未熟の致す所ですm(_ _)m💦 ちなみに拙作『アウェイ』、確かにタイトルがア
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 こんにちは。一番最初に読んだ『アムウェイ』は登場人物ひとりひとりをを自分の分身として考えさせられたのではないかと思います。文学的には素晴らしかったと思いますが、なぜ入賞しなかったのかとご質問を受けるならば、コンテストによってはハッキリした前向きな方向性の見える結末が評価されたのかもとは思います。一回ダメでも他のコンテストにそのまま横滑りされたら良いのではと思います。今回の作品は、絶対に妄想のようにアイデアを重視するコンテストに出せば良かったかと思います。
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