小原瑞樹

優しいがゆえに近づけない。
田舎町の家電屋に務める男性泰輔は、客である老人の孫娘であるましろと出会う。名前通り清廉で無垢なましろに泰輔は惹かれていくが、ましろは決して彼を近づけようとしない。嫌いではないのに拒んでしまう理由。それは彼女が『罪』を犯した過去にあった。 文章はしっとりとして透明感があり、二人の心境が交互に綴られながら物語は進んでいきます。ましろを知りたい、近づきたいと願う泰輔の心境、彼を受け入れたいと願いつつも、自分は幸せになる資格がないと世界を閉ざしてしまうましろの心境。相手を思うがゆえに距離を縮められない二人の優しさが胸を打ちます。 儚げな雰囲気を持つましろは、ここにいるはずなのにすぐに消えてしまいそうな危うさを抱えています。泰輔もそれに気づいて強引に彼女との距離を詰めようとしますが、ましろは遠ざかっていくばかり。この二人の関係はどうなるのか、贖罪意識を抱えたましろが幸せになれる日は来るのか、重く苦しい展開が続きますが、ぜひ結末を見届けてほしい作品です。 『流行に乗らなくても頑張る作品』トピックから読ませてもらいました。 しっとりとした大人の恋愛物が読みたい方にお勧めです。
1件

この投稿に対するコメントはありません