夜斗

溺れる
――ただ、あいつだけは人間のまま、ずっと二年前の今日を泳いでいる―― あぁこんなに言葉が何かを意味を持って、その人の感情ごとあらわすことがあるのか。 思わずため息が出てしまうほどの、そんな作品でした。 タイトルは魚「たち」と、題され、読み終わってから何度も何度も彼らの独白を見つめては瞳を震わさざるを得ない。 この作品の先には、読者はいなくてただ彼らが泳ごうともがいた水槽に強制的に投げ込まれるような、そんな感覚。 ぱくぱく、と口を動かし、溺れていることにも気づけずに、けれど死ぬことだけは平等だといい、と願った「主人公」が少しでも報われてほしい、と。 持て余す。 きっとその言葉が合うほどの、完璧で美しい文章の中で、あぁこの人の言葉に溺れていたい、とそんな持て余した感情に頭がぐちゃぐちゃに殴られたような気持ちがしています。 綺麗な笑顔と、綺麗な掌で心の臓を掴まれた気分。 1文字ですら欠ければ、この感動は味わえないのだと思うと恐怖を覚えるくらい、素晴らしい作品でした。 もし、主人公に会えるならば、魚となって泳ぐ「彼」に出会えるならば私が酸素ボンベを持っていってしまいたい。 けれど、そうやって魚になれない私では主人公も「彼」も優しく笑うだけでそれを遠い沖へ投げ捨ててしまうのだろう、と寂しい気持ちもして。 彼らだけの時間と無音と、そして持て余した言葉を全て深海が呑み込んでくれたらと願わずにはいられません。 素敵な作品ありがとございました🙇 いきなりの感想申し訳ありません……長々と失礼致しました。感情のまま書いたので、何か失礼がありましたらご容赦ください。
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