リミル

▶キスの日SSツイノベ(🍯愛人オメガ) 互いに気持ちを通じ合わせた日以来、レグルシュの部屋で眠ることになった。レグルシュの匂いに満たされた寝室。最愛のアルファのフェロモンを嗅いでいると、心が安らぐのを感じる。眠りに落ちる前に、その匂いがいっそう濃くなった。 「……起こしたか?」 「ううん……起きてました」 背中が温かくなる。レグルシュの大きな手が、子のいる腹を撫でた。 「具合は大丈夫か。吐き気は」 「大丈夫です。……僕は、レグのほうが心配です」 「……?」 「だって、今日もこんなに遅くまで」 「ああ、俺のことは心配するな。別に疲れてない」 レグルシュは千歳の髪や頬に、キスをする。想いが通じ合ってから、レグルシュは項と唇には頑なに触れようとしない。千歳はそれだけが気がかりだった。くすぐったくて身動ぐと、濡れた感触が唇にぶつかった。 「……っ。悪い」 「え……?」 ──どうして謝るの? 幸せに満たされた千歳の心に、不安の波がさざめく。 「レグは、僕とキスするのが嫌ですか?」 「嫌ではない……が」 レグルシュは腹を撫でていた手を、ぴたりと止めた。 「妊娠しているときにキスをしていいものかと……」 「い、いいんじゃないでしょうか?」 「そう、なのか? お前の具合が悪くなったらと、子供に何かあったらと、思っていたんだが」 「多分……大丈夫だと思います」 「そ、そうか」 レグルシュが珍しく狼狽えている。 暗闇の中で引き寄せられ、舌を一度だけ絡ませ合った。短いようで長い。そんな一瞬だった。 「おやすみ。千歳」 「おやすみなさい」 あたたかくて、やわらかくて、胸が痛かった。でも、もう一度……何度でもしたい。 千歳は起き上がると、唇を指でなぞるレグルシュに、口付けを落とした。 fin.
45件

この投稿に対するコメントはありません