見事なドンデン返しと構成の妙の恋愛ミステリー
 作者は恋愛をテーマとしたミステリー色の濃い作品を数多く発表している。  『望遠鏡』は作者初期の作品であるが、刑事事件こそないものの、最後に意外な真相が明らかになる。  作者が語る通り、このドンデン返しに驚くためには最後まで必ず読まなければならない。相当ショックを受ける筈だ。  この作品には、登場人物の出会いがいくつも出てくる。さりげない出会いのように思って読み進める。  ところがさりげないと思われていたひとつの出会いが、ただの独立した出会いではなくなってくる。  ひとつの出会いが、ほかの出会いとあるときは重なり、あるときは絡み合い、次第に読者の心の中に、謎と不安をかきたてていく。  卓也と亀谷美咲の再会  そしてフラワーショップでのもうひとりの美咲と亀谷美咲との出会い  亀谷美咲とフラワーショップのお客との出会い  美咲と綱島の出会い   亀谷美咲と綱島の父親の出会い  脈絡のない筈のいくつもの出会いが、恋愛をテーマとした大きなストーリーにまとまっていく。  私は、いくつものバラバラの「出会い」が、最後にはひとつのパズルにまとまる独特の展開に、非常に構成の斬新さと面白さを感じた。  意外なドンデン返しには巧妙に伏線が敷かれており、登場人物の曰くありげな描写の部分も、パズルの完成したとき、 「なるほど」 と読者を納得させる手がかりとなっている。  最後になるが、この作品の魅力を簡単にまとめてみよう。  この作品は、人を愛するということの怖さがサスペンスとして絶妙に描かれている。  ことに人物描写がひとりひとり強い印象を残す。  そしてこれが重要なのだが、人を愛するということは、実に怖くて恐ろしいことなのだけれど、それでもやはり人を愛するほど素晴らしいものはないのだと感動させてくれる。  構成の妙、そして予測不可能なドンデン返しの恋愛ミステリーとしてお勧めしたい。
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倉橋様素敵なレビューありがとうございます🙏 本当に最後まで読まないとこの本のストーリーはわからない…というストーリー構成にしてしまって、それを書いていただけてとても光栄です😭 本当にありがとうございます🥺 私もこの物語の人物一人一人の様に、過去から何かを見いだし、生きていける人間でありたいと思います🙇‍♀️
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