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モウ イイカイ…?
倉橋
2023/8/20 9:06
澁谷沓『新遠野物語』 解説
東北に古くから伝わる『遠野物語』は、怪異、怪談を集めた物語集であり、この著には陸奥の風土に根ざしたストーリーが多く集められているというのが、柳田先生や南方先生の説である。 果たしてそうなのか。無学な私には見当もつかないが、澁谷氏の怪奇幻想短編を読むとき、陸奥の風土というよりは、明るくあたたかい太陽の光というイメージが強い。 澁谷氏のエッセーに見られるような、あっけらかんとした天真爛漫さが常に背景にある。従って怪奇幻想短編に見られるある種の不健康、不健全なイメージ、背徳感、陰湿さ、不快感からは程遠い。 明るい太陽の下で、澁谷氏の練りに練られた文章が綴られるとき、それは明るいタッチ故に次第に読者の不安と焦燥感を強くかきたてていく。そして最後には大間崎の荒れ狂う暗い海のような光景が読者の眼前に迫り、唐突に太陽の下から闇に放り出される。 今回の作品は、非常に怖い。そして背景は明るい。明るいままに、「死」への暗示を読者へ提示して消えていく。 『遠野物語』には常に「死」が散財する。「死」こそ『遠野物語』なのだ。『遠野物語』とは、陸奥の光景の一側面なのである。 著者の名前は失念したが、このような文章を読み、非常に心に残ったことを告白しなければならない。 澁谷氏の怪奇幻想短編は、やはり陸奥ならではの「死」という重いテーマをモチーフにしており、それを太陽の下で明るく展開するところに澁谷氏の真骨頂がある。 まさしく『新遠野物語』というタイトルは、澁谷氏のためにあるのだろう。 〜いつか澁谷氏の怪奇幻想短編が一冊の本にまとめられることを期待して。表紙は太宰治の笑顔がよかろう。〜
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澁谷沓(シブヤクツ)♪
2023/8/21 6:34
倉橋さま✨ ご感想…ありがとうございます✨ (それにつけてもいつもながらの美文名文✨) 柳田先生の遠野物語は…小泉八雲氏の怪談と並んで、私の(夏の)座右の書です…♪…なぜか本棚から取り出したくなっちゃう…☆彡 倉橋さまのおっしゃる通り、東北産のもの…に限らず、日本の所謂定番化しているコワいおはなしには、陰湿かつ陰惨な怨念邪念…要は恨みツラミやら嫉心やら、そういうある種の人間的な感情が基調にあると思うのですが…なんかね、私は意味不明&因果不明の偶然のコワさに惹かれるのです…✨ 倉橋さまからご評価を頂けるのが、私の創作のなによりの励みです…☆彡 今回も心よりの御礼を申し上げさせて頂きます…✨
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倉橋