Joe Jan Jack

放課後の図書室で読みたい、一枚の絵画
ため息が出るほど良かったです。 文章で読むための物語、物語のためにある文章。 一枚の絵のように切り取られた「最期」のその後のお話。 もっと若い感性で、放課後の図書室で一人で静かに読み耽りたい、そんな作品でした。 巨大な目玉が見つめる舟の上で、茶を飲みながら身の上話を語り合う。ひとときを共有する中で、それぞれが自身と向き合って、次の道へと導かれていく。 ある意味死後の裁きの場で、乗り合わせた人々は、正体も本音も曝け出させられていきます。 少年ラジは復讐のための殺人を犯す手前で死んでしまったので、生前に罪は犯していない。ですが、本気でやるつもりだったことへの罪悪感と、果たせなかった悔しさとがせめぎ合い、また、(死後なのに)周囲の目を気にしていたりと、心の中は穏やかではありません。 少年の繊細な心情と同じ事故で亡くなった様々な人たちの人間模様を描く表現の多彩さからは、書くものに合わせて磨られた墨を感じました。 内容的にはどんどん出来事が起こっていくようなエンタメ性のあるものではないのですが、かといって堅苦しくなく、最後はすっきりとした終わりを迎えます。 リアルの世界では、実行に移さず、自分の心の中だけに止めていれば罪には問われません。が、目玉が見通す世界では、考えただけでも罪か、貧しくても罪か、恵まれた生まれでも罪かを問われている気がしました。 昔読んだ本に(それはキリスト教系の考え方だったと思いますが)、「天国は死ぬ時の気持ちだ」みたいなことが書かれていて、死後の世界や転生を信じるほうではない自分としては、なるほど確かにと思った記憶があります。 この話はそもそも宗教や文化が違うし、すでに死んでいるので、生きているうちには体験できないところなのですが、こういう世界がありそうな気持ちになりましたし、最後のラジの気持ちを考えれば、天国に行けたとも言えるのかなと思いました。 ラジは生まれ変わってエトラと幸せになってほしいです。 ※特に信じる宗教はなく、宗教・哲学・文化などの知識は浅いほうです。的外れなところがあったらすみません…。
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Joe Jan Jackさま このたびはお読みくださいましたうえ、ご感想を寄せていただき誠にありがとうございます! 飛び上がって喜んでおります^^ お気に召していただけたようで大変嬉しいです。安堵いたしました。 >文章で読むための物語、物語のためにある文章。 ありがとうございます! 最高の褒め言葉です! 嬉しすぎて気が遠くなりましたw >本気でやるつもりだったことへの罪悪感と、果たせなかった悔しさとがせめぎ合い そうなんです、ラジは生前にはなんの罪も犯してないのです。むしろ濡れ衣を着せられた被害者です。けれど、本気でやるつもりだった罪悪感、してはいけないと思う倫理観、果たせなかっ
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