吾妻栄子

https://estar.jp/novels/26148658 「昔っから七夕、嫌いなんだよな」  血の気の引いたままの唇をした相手は雨音に紛らすように小さな声で呟いた。 「どっかから切ってきた笹に色紙で飾り付けして、短冊に願い事なんか書いても何一つ手に入らない」  どう答えれば良いのだろう。  それとも、返事など期待されていないのだろうか。  相手はそれきり口を噤むとこちらに凭れ掛かっているのか引っ張っているのか判然としない体勢のまま階段を上がっていく。 二人の関係はどうなるのか。
5件

この投稿に対するコメントはありません