吾妻栄子

https://estar.jp/creator_tool/novels/26148658 改札が見えてきた。  その向こうに真っ白なタンクトップを着た長身の人影が人の群れから浮かび上がるようにして目に飛び込んでくる。  服の白と競うように赤みのない白い肌、太く長い頸、細いが筋肉質な腕、針金じみた真っ直ぐな黒髪。  背の高さに比して小さな顔は日陰の雪じみて蒼白く、切れ長な目と眉だけが際立って黒く見える。  と、こちらと眼差しを合わせたその切れ長い双眸にパッと潤んだ光が点った。  サーッと背筋に冷たいものが通り過ぎる。  その一方で、胸に全身の血がワーッと凝縮して集まる感じがして鼓動が早打った。  離れている間、俺はこいつを憎んでいたはずだった。  電車に乗っている間も顔を合わせれば罵詈雑言が止まらなくなるのではないかと自分を危ぶんだ。  だが、今、直に姿を目にするとひたすら怖いのだ。  美生子と陽希の再会は互いに何をもたらすのか。
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