小池正浩

 今年はめずらしくテレビドラマをなぜか、わりあい熱心によく観ています。個人的な感触としては当たり年なんじゃないかなあと。実際くしくも、安達奈緒子脚本の『100万回 言えばよかった』ではじまり『きのう何食べた?』で暮れていくという。とはいっても今期もいくつか、ひとクールっていうんですか、毎週せいぜい二、三作ほど観てるにすぎないですが。で先日、最終話が放送された『何曜日に生まれたの』、いやあ凄くいいじゃないですか、刺さるとかエモいとかじゃなくて広がるっていうか連れていってくれるっていうかね、とはいえ〝いま〟ふうにうまくアップデートしようと工夫してはいてもちょっと現代ドラマにしては主要キャラである若い世代の感性も関係性ももうひとつ古いのはどうしてもいなめないところ、それでも毎話ごとに新しい景色を見せる物語展開と人物造形はさすが、作者という存在が作品内の物語にちょくせつ介入しキャラクターを救ったにとどまらず、虚構とリアルが、過去と現在が、嘘と本音が、そしてそのたがいに対立し関係するそれぞれの感情が、やがて干渉し混ざりあい更新されることによって、最終的には作者自身が作中人物に救われるという祈念にも似た穏やかな結末、ご都合主義ともハッピーエンディングすぎるとも受けとられかねないのをおそれず、野島伸司オリジナル脚本としては半世紀近く前の『未成年』とならぶ大、大、大成功作だと評価できる。物語というものを、物語に潜在する可能性の力をギリギリきわの最後の最後まで信じたいという祈りというか、救いというか。すばらしかったような印象のある『この世の果て』を再視聴できてないので、かならずしも最高傑作とは断言できないですが。  ほかにも原作があるにせよ、香坂隆史が脚本を担当した『ハヤブサ消防団』といい、大森美香が脚本を書いた『シッコウ!!~犬と私と執行官~』といい、ほんとうに傑出したドラマばかりでした。とくに大森脚本の『シッコウ!!』はリーガル社会派ドラマの先駆的作品のひとつ『カバチタレ!』を想起させるほど出色のできばえ。絶妙なバランス感覚に支えられたユーモアと社会問題の対比、繊細にかつ明確に表現され織り成される登場人物ひとりひとりの心理的な機微や人間関係の綾と波、そういったもろもろの交差的で多様化した複雑な現代性を正確に、さらにはしなやかに物語に反映させる技法には毎度毎度じんとさせられました。
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