mati

読後に放心させられるほどの、強烈な負の感情を描いた作品。
凄まじい作品を見つけてしまった。これが第一印象です。 近代文学風と銘打たれていますが、その完成度の高さに驚かされました。恥ずかしながら意味を知らない言葉もいくつかあり、検索に掛けながら読み進めました。 プロ小説家の趣味用裏アカウントと言われれば納得するレベルの文章力です。勿論ストーリーも。 私は2話目から更新を追っていました。話が進むごとに、主人公の苦しみや怒りが重くのし掛かってくる。むしろ彼の闇に引きずり込まれる。呑み込まれる。凄まじい引力というか、重力。Gが凄い。 他人へ向けられる優しさに反比例する、自己に対する攻撃性。これこそがギャップ。《娯楽》小説には成り得ない。文学・文芸、もはやアートの領域。 再読するにも気力が必要で、感想を書くのが遅くなってしまいました。普段はレビュー的なコメントを書かない人間ですが、この作品の魅力を拙くとも、少しでもお伝えしたい気持ちで、懸命に画面へと向かっています。 古めかしく難解な文体は、作品の雰囲気づくりは勿論のこと、世界を立体的にし、主人公の苦悩に説得力を持たせる効果を発揮していると思います。 中世ヨーロッパ風の異世界というと、ありふれた設定にも思えますが、この物語、主人公の激しすぎる葛藤が成立するのは、当時の社会のあり方や思想などを多分に反映させた世界観であるがこそ。 主人公の哲学的思考。なんとなく理解できた気にはなれますが、こんなものはひどく表面的な部分に過ぎないのでしょう。どこかでストッパーが働いてしまう。主人公の感覚に深く共感できてしまえば、自分がどうにかなりそうで。 私のような並大抵の人間が、これだけの思考力の高さと負の感情への造詣の深さについていくのは、困難です。行間に隠されたものも、その存在は感じられるけれど、正体は分からない。 心も頭もメチャクチャにされるような感覚を味わえる作品です。文量はさほど多くありませんが、超ヘビー級でした。 この振り切り具合は、WEBでも商業書籍でも、なかなかお目にかかれない。 感性も技術も、WEB小説界隈の平均的レベルを遥かに頭抜けています。 読了後の、哀愁とも、虚しさとも、疲労感とも、解放感とも、なんとも形容し難い感覚を、皆さんもぜひ味わってください。
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mati様 大ボリュームの感想レビュー、本当にありがとうございます。お褒めの言葉があまりにも嬉しく、舞い上がっております。 小説を書くにあたって、文体には都度こだわっておりますが、こちらは特に力を入れたものですので、そのように評していただけて大変ありがたいです。 行間まで読み取ろうとしてくださったとは…。この作品をそうまで深く読み込んでいただけたことに、感激しております。 更新中も、スターやスタンプを送ってくださって、ありがとうございました。とても励みになりました。 読んでくださった方を消耗させられるだけの重さが、この作品に籠もっているのなら、私もエネルギーを使いまくって書いた甲斐があります。
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