文体を生かした男の独白が良い!
よかった ①手紙という形を生かした独白  主人公の加速的な心理描写やその思考へと至る因果が、手紙を通すことで会話や他者のリアクションといった障害物から守られ、ダイレクトに読者に伝わってきました。 ②豊富な語彙  紅焔のように赫く蒼穹~~など、非常に豊富な語彙がありました。ただ使うだけでなく、言葉の意味を丁寧に回収しているのもよかったです ③連想させる描写  "国鉄" というワードで時代背景を醸したり、ナミちゃんの行動から心理状態などをにじませたり、"昔"、"怖い" といった直接的な表現ではない技法に、小説本来の読んで楽しむという面白さがありました 気になった点 ①手紙の目的  俺の声を聴いてほしい。貴方に届いてほしい。という願いこそ伝われど、なぜそれを "貴方" に届ける必要があったのか。そこにも強さが欲しかったです。同じような境遇だという理由以外にも、耳を傾けてどうしてほしいのか、ただ聴いてほしいだけなのか。コンテスト出品作とのことで文字数との戦いもあるのでしょうが、すみません。欲しかったです。 ②シャム双生児に関すること  アネちゃんは結構この物語では根幹的パーツの一つですから、もうちょっとチラチラ見せながら、その正体が分かった! という書き方でもいいと思います。せっかくヨーコちゃんの独り言の情景まで描写して、その回答を本で読んで知りました。ああ合点が行った。というのは少し勿体なさを感じてしまいました。 ※レイアウト(内容関係ナシ)  もうちょっと改行や空白行が欲しいです。PCならまだしもコレをスマホで読むと結構読みづらいかもです。目がチカチカします。 まとめ  社会問題への提起を盛り込んだ悲しいストーリーを "手紙" という題材を用いてうまく表現しています。善悪云々よりも徐々に加速していく主人公の心理や、最後の結論に至るまでの動機が、誰にも邪魔されることなくまっすぐとつづられていました。本来こういった現実の世俗を扱う文章は共感が難しく、どちらかと言えば自分の感情や価値観でアレコレと論評してしまうのですが、ソレをさせない "うまさ" が本作にはありました。  限られた文字数の中での難しさもあるのですが、もうチョット鏤めた伏線や動機の結論をしっかりと書いてみると、更に奥深く迄抉るような展開になると思います。  読ませて頂いてありがとうございました。
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