個性の塊です。
よかった点 ①独白めいた特徴的な文章  企画ですでに数十人読んでいるのですが、ここまで独特な切り口の描写は初めてです。「しかし」や「そして」といった接続詞が極端に少なく、独特なピースを埋めるような世界の展開を感じることができました。「再起動」や幼年の記憶など、全体的にダーティかつミステリアスな雰囲気の本作によくマッチしており、文章自体からじわじわと緊張が這いよるようで、面白かったです。 ②シンプルな表現  あくまでも表現や語彙はシンプルで、わかりやすかったです。これが案外珍しく、かつ分かりやすくて「ほぉ~~」と唸ってました。上の文体の個性も相まって作品自体のミステリアスの邪魔をしないように努めており、まっすぐと物語自体を楽しむことができました。 気になった点 ①街のはずれにある路地  どんな路地でしょうか。何かを想起させる道であることは確かに解るのですが、建物や立て札、アスファルトの舗装具合など、読者が『こういう路地ね』となるような情報が欲しかったです。ほかにも ”ちょっとはいい体型” など、読者へ任せる表現が多く、読む人によって違う世界を想起してしまいます。 ②突発的かつ断続的な情報  物語を展開している途中に、新しい情報がポンと現れます。一度や二度ではなく、複数回ありました。多少なら意外性があっていいと思うのですが、繰り返されるとその都度脳内の世界や設定を書き直さなければなりません。描写の詳細を読者にゆだねる本作では、余計にその難易度が増していました。 まとめ  全体的にタイムリープや「再起動」といった要素に加え、ミステリアスな世界観が多く難易度の高いストーリーとなっています。それは間違いありません。ただそれを上手く読者に読みやすくするように、文章や表現が直線的なものに工夫され、ただ読んでいてゲンナリとすることを見事に防ぎ、また引き立てていると感じました。気になった点としては、情報や描写の出力を読者にやや委ねすぎているように感じました。世界観自体しっかりと作りこまれているようですので、もっと自信をもって「私の書きたい世界はこうだ!」と、読み手に旗を振ってもいいかもしれません。面白かったです!これからも頑張ってください!

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