小池正浩

 2023年もあと二週間で終わり、今年は小説の創作よりも批評のほうに力を入れましたし、柄にもなくTVドラマもよく観たほうです、がインプット強化はここまで、来年はこの調子で評論活動を継続しつつ創作活動に集中してやるぞ、ということでいちおう僕はこれでも活字中毒を自認している人間、本年もけっこうそれなりに本を読みました、いや、ま、といっても一週間に平均だいたい二、三冊読了する程度なので本物の本好きからすればたいしたことないかもしれません、が試しに順不同でベスト5ぐらい勝手に発表してみましょうか、とちなみに、いわゆる積ん読していた本もあったり、とうに発売していたのを知らなかった、興味をもって購入したのが最近だったとかだったりして、今年出版された書籍ともかぎりません。 『言語的思考へ』竹田青嗣  半年ぐらいで三回は連続通読。誰も解けなかった言語という性質の謎を現象学の方法論でみごと解いているノーベル賞ものでしょって名論。 『落日の門』連城三紀彦  恋愛ミステリーであり疑似ヒストリー小説でもあるこの連作は数ある連城作品の、数ある傑作名作のなかでも群を抜いて衝撃的かつ感動的。たとえば「私、今、一生ぶん抱かれました」という言葉の真意、あんなセリフとシチュエーション、凡百の恋愛ドラマなんかじゃ100%まずだせないでしょ。真相に震えた。 『木島日記 もどき開口』大塚英志  ほかの偽史三部作ふくめシリーズ全作すべて漫画から読破。ああ泣いた。この画期的作品群に気づいてない読者や黙殺している文壇はいい加減いかがなものか。語り、歴史、政治に対する批評性の高さと表現力がとにかく凄い。森美夏の画力も凄い(カーのバンコラン・シリーズの表紙イラストも最高にイメージぴったりで素敵)。 『死の10パーセント』フレドリック・ブラウン  編者の小森収の解説といっしょに堪能すると、物語構造と創作手法の両面からより深く複雑な味わいをおぼえられます。ごちそうさまでした。 『黄色い夜』宮内悠介  宮内作品は大好きで文庫で全作追っかけてます(翻訳したクラウディア・ヴァーホーヴェン著『最初のテロリスト カラコーゾフ──ドストエフスキーに霊感を与えた男』だけ例外的に即購読)。ボーダーレスでジャンルレスでなおコアな物語を紡げる作家ってほんとこの人しかいないよなって毎回おもってますが、とくに今回は痺れました、芯から。
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