うづきあお

どっぷりと耽美的な物語でした。とても好きです。
詠うような台詞回しと文体に手を引かれ、するりと物語に入りました。 読み手に響くリズムがとても心地よく、物語全体が小気味よく転がるようでした。 盲目の老人、静流の元に押しかけ女房にきた物の怪。 老人に『桃』と名付けられたその物の怪が、とにかく可愛らしい。 昨今の萌え要素に頼った可愛らしさではなく、恋をした女の、思わず共感してしまう恥じらいや強がり、茶目っ気に、読んでいてにっこりしてしまいました。 それでいて物の怪としての掘りも深く、桃のギャップにやられました。 静流と桃の皮肉混じりな掛け合いから愛情のこもったやり取りが大好きです。 さらりとしていながらも丁寧に描かれる愛の紡ぎは、年齢や種族などという俗な壁をすっかり取り払ってしまいました。 私もいつしか心から応援し、長くないと分かっている二人の時間を大切に見守っていました。 そんな中で迎えるラストにはもう号泣です😭 ですが決して悲しくて苦いだけのしんみりした涙ではなく、納得と感動に落とし込んだ、読後に爽やかなものさえ残される幕引きでした。 構成や表現に作者様のセンスと感性が光り、とても楽しませていただきました。 素敵な物語をどうもありがとうございました。
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読んでいただき、ありがとうございます! お褒めの言葉、嬉しいです(*´▽`*) 金木製の香る季節に、また思い出してやってくださいませ。

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