吾妻栄子

https://estar.jp/novels/26148658?utm_source=twitter&utm_medium=social&utm_campaign=viewer 「もうお腹の赤ちゃん、大きくなってきてるんだね」  すらりとした長身にクリスマスらしいエメラルドグリーンのセーターを纏った、午後のどこか薄暗い学内の廊下ではそこに立つだけで華やかな灯りを点したような、人化したクリスマスツリーじみた美咲は猫じみた大きな目を細めて笑った。  真っ直ぐな黒髪に生じた光の輪が動くと、薔薇の匂いがほのかに届いた。 「もう二十四週で七ヶ月目だからね」  こちらは上はフリマアプリで買った大きめのベージュのコートに母親に譲られたアイボリーのニットワンピースの突き出た腹に目を落として苦笑いする。  妊娠した当事者だと週数で認識するが、第三者だともっと大まかな月数で把握するのが少しもどかしい。  ましてここでは美咲はもちろん辺りを通り過ぎていく学生たちにも妊婦らしい人はないし。
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