山口そら

ブロッコリーを食べなきゃね
「ブロッコリーって丸ごと茹でる人っていないでしょ?」 私は食卓のテーブルに乗っかってる茹で上がった小さな大木に話し掛ける。 「だって、難しいんだよ。均等の大きさにならないし、どこから切り分けて良いか悩んじゃうんだ」 ブロッコリーを丸々茹でた司さんは眉毛をへのへのもへ字にした。 私はその様子を見てため息をつき、フォークとナイフを手に取った。 皿の真ん中で悠々と仁王立ちしている小さな大木に思いっきりフォークを突き刺す。 ヘタの部分を切り株にして、生い茂った幾重にも分かれた枝先にフォークを入れ込む。 大木のブロッコリーは小さな小さな木にいくつもいくつも分かれていく。 大小さまざまな小さな木が皿いっぱいに広がり、大きな大木はあっという間に森へと姿を変えた。 「ブロッコリーって不思議だよね。小さな木をたくさん集めて大きくなってるみたいだよね。小さな幸せが集まってるみたい。別に形なんて悩まなくて良いのよ…だって…」 ドレッシングを森の上にかける。フォークを司さんに渡した。 「だって、どんな形でも2人で食べたら全部楽しい」 司さんのへのへのもへ字は、迷いがなくなったように綺麗なお山を作った。
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たまには猫の手以上のなにかをしたい。 司は思った。 清掃にまつわる能力ははじめから持ち合わせていない。 少し高い所に洗濯物を干す能力はあるが、洗濯ばさみを扱う成績が下の下だ。 衣類をたたむと、四角いものを三角や五角にしてしまう謎能力が働く。 料理センスは独創を通り越して宇宙のかなたに走り去ってしまう。 で、ブロッコリだ。 恐らく火を通さねばなるまい。 植物として生まれたからには残さず美味しく食べられたいのではないか。 そして人は道具を使う、それが人として生まれた者の特権だ。 いや、最近は動物もうまく道具を使えるんだっけ。 だとしたら俺はおさるとチンパンジーとボノボとゴリラ
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ブロッコリーを食べなきゃね笑
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