無限の広がりと永遠を感じさせる作品
 作者の作品は多彩であり、完全な小説形式のこともあれば、詩としてまとめられていることもある。   この作品は、作者の最近の傾向である「散文詩」のジャンルに入るのかと思う。かつてポーが得意とした分野である。  一種の謎解きにもなっており、最初にこの世のものとは思えない美女の独白を描き、後半でその正体を暴いていく。形式だけでも、読者に非常な興趣を与えることと思う。  ただこの作品の魅力というのは単なる「鬼面人を驚かす」構成ではない。  この作品の行間である。  作者独特のよく練られた見事な文章は、無限の想像を読者に掻き立ててくれる。  彼女の人生は幸せだったのか、それとも薄幸だったのだろうか?  彼女の人生の年譜はどのように編纂されるべきなのだろうか?  彼女と父親との関係はどのようなものだったのだろうか?  父親の思いとは、単なる娘への肉親としての感情なのか、それともその奥底には深い闇が隠されているのだろうか?  この作品は、「省略の美学」と云うか、無数のストーリーが作品に隠されている。  読者ひとりひとりによってこの作品の世界は無限に広がり、読者によって物語は永遠に続いていく。  そう……。いつのまにか読者は、画廊の客として、この作品の世界を彷徨っている。  これから先、読者はどうなるのだろうか?  やがては現実に引き戻され、白昼の雑踏をいつものように疲れた顔でとぼとぼと歩いていくのか?  それとも永遠にこの作品の中の登場人物として彼女への愛を捧げ、彼女と結ばれる方法を必死で模索しているのだろうか?  この作品は、純文学が重視する「行間」を巧みに活用した魅力的な作品であり、作者が得意な絵画がこの作品との二重奏を演出している。  「すごい作品に取り込まれてしまった」  今はそんな夢見心地な思いでいっぱいである。  僕はこの作品の中の放浪者として、何百年先もこの絵の中で生き続けているのだろうか?
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倉橋さま✨ さっそくオミ足をお運び頂き…さらにはご感想まで、ありがとうございます〜☀ どっかに似たようなモチーフの作品があったりして…等と思い至り、オソルオソルのアップでしたが…💦 そして間髪入れず、次作行きます〜💨
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 『ドリアングレイ』は完全に趣が違うと思います。絵が生きているという設定は今まであっても、その理由付で故人の肉体を使って作られた絵というストーリーは思い浮かびません。「ムー」、矢追さんの「実話」ではベンサムの骨や肉などを使って作られた生前像が夜中に大学内を彷徨ったという話はありましたが、フィクションでは先行するものに有名な作品はないと安心されてよろしいと思います。一位おめでとうございます。
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