群鳥安民

青春の劣等感が薫らす懸命な旋律、差し伸べられた手の温もり
 教室の情景、保川さんと鍵本くんの心情が繊細に美しく描かれており、読者である私もその場に居るような感覚でした。2人のこれまでの歩みを知って、周囲の目線を気にしてしまう保川さんや、クラスメイトとは一線を画す鍵本くんのキャラがよく解って、ハッピーエンドを願いたくなる作品でした。  また、ピアノ演奏を扱った物語として、具体的なクラシック曲やコードが作中で登場していたのが良かったです。宮内ぱむさんはピアノのご経験がおありなんでしょうか。ピアノ演奏のことを詳しく書けるのは、経験あってのことなのだろうなと推測しました。  私はピアノについて詳しくないので、少しでも音楽の感覚を取り込みながらこの物語を読んでみたいと思いました。そこで、「ピアニッシモ」を一度読み通した後、実際のクラシック曲を作中に登場する都度に聴きながら、もう一度物語を読み返してみました。曲名は知らずとも聴き馴染みのあるクラシック曲ばかりで、リアリティと言うか、物語が身近な世界で巻き起こっている感覚でした。  題名の「ピアニッシモ」ですが、あれは鍵本兄弟のことでもあり、物語としては鍵本くんと保川さんの2人を指しているのかもしれないと想像しました。  誰かを頼ることって難しいですよね。自分がやらなくちゃいけないって責任感は、時に自分を閉塞的な雁字搦めにしてしまう。一匹狼を貫いていると、他人との関わりが希薄化してしまう。人というものは利己的に行動しがちですが、自分が困っている時にこそ手を差し伸べてくれる存在は、人生において大切にしなければいけない存在。村中先生のように過干渉でない優しさや、鍵本くんのおばあちゃんのように親身になってくれる人がいて救われる人がいる。その救われた人がまた誰かの支えになれる。暗澹とした社会では理想論のような好循環ですが、そのきっかけは誰からでも始められると思うと、まずは自分からって思えますよね😊 弱さって、助けられて強くなるものなんでしょうね。  色んな創作に手を出している私も、沢山の人の支えで今があります。全部自分で成し遂げてみたいと思います。でも、どうしても一人で作れないものを作りたい時、周りに頼ってもいい。「ピアニッシモ」はそう思わせてくれる作品でした。  作品のレビューなのに自分の話までして、長文ですみません。私もいつか、素晴らしい旋律を奏でてみせます。そのいつかを、ご笑覧あれ。
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群鳥安民さん、素敵なご感想をありがとうございます!!「その場にいるような感覚」とおっしゃっていただき、嬉しいです。 私個人の話になりますが、ピアノは少しだけ習わせてもらいましたが、今は全く弾きません…。妹がそこそこ弾く人なので、ピアノや兄弟を題材にした気がします。 私自身クラシックには疎いのですがピアノの音色が好きなので、聴いた上で再度読み返してくださったことに感動しております…!! 人と人の関係性を書くのが好きです。 家族じゃなかったり恋愛じゃなくたって、お互い作用し合う関係に憧れます。 2人のハッピーエンドを願ってくださり、嬉しいです。 理想論かもしれませんが、人の温かさや優しさを願わず
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