komachi

成瀬先輩は日本で一番難しい医学部に現役合格したイケメンだが生まれ育ちは普通のサラリーマン家庭だった。大学では、病院だの会社経営だのの家庭出身者ばかりに囲まれて、ヒエラルキー的に色々抱えていたのかもしれない。だから、先輩は美沙先輩や冴子のような普通の家の子を求めたのだろうか。先輩は自信を失っていたから、冴子の方から踏み込んでくるのを待っていたのかもしれない。全て先輩がお膳立てしてくれていたことに気づけよ冴子!が、冴子からしたら、医者の卵なんて恐れ多すぎたのだ。 サークルにはもう1人医学部の同期がいたが、そいつは「俺んちは親は勤務医だし、たいしたことない」と言ってた。いやいや、普通の人からみたら、親が医師って十分凄いから! それくらい、ピラミッドの頂点に君臨する小さなピラミッドの内部は物凄い格差社会だった。おそらく成瀬先輩はそれゆえにもがいていたのかもしれない。別の大学の医学部なら希望の科にいけたかもしれないのだ。大変優秀ゆえに"牛後"になってしまった悲劇、だったかもしれない。だとすれば、冴子にできることは何もなかったのだ、と思うしかない。 先輩には鶏口であって欲しかった。 https://estar.jp/novels/26206200
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