ペッパー

「ユウキクン、今日は何の日だと思う?」  我ながら意地悪な質問だ。この子がボクの誕生日など知っているはずもない。この学園に来てからもう何年も経っているが、毎年誕生日は仁クンからしか祝ってもらえたことがないのだ。ボクの誕生日を知っている人など、極小数に限られる。 「山科先輩の誕生日ですよね?」  ……なんて考えていたのに、ユウキクンはあっさりとその答えを出した。一体何で知っているのか。 「国玉先輩が昨日言ってたんですよ。明日は四年ぶりに虎助の誕生日だなって」 「個人情報の漏洩だネ。仁クンには文句を言っておこう」 「……そのわりには嬉しそうな笑顔ですね?」 「これは仁クンを正当な理由でイジれるという嬉しさから来てる笑顔だヨ」 「国玉先輩今すぐ逃げて……なんていう冗談はさておきですが、そういうわけで今お時間ありますか?」  今はちょうど親衛隊のお茶会が終わったところで、そこにユウキクンが現れたのだ。もうみんな帰っているし、あとは簡単に忘れ物がないかなどの確認をすればもうボクも帰るつもりだった。 「時間ならあるケド……」 「じゃあ帰ったら俺の部屋来てください! それでは!」   「……一緒に帰ろうって誘いに来たワケじゃないんだネ」    ボクはやれやれと肩をすくめ、確認を早めに済ませてユウキクンの部屋へと向かった。  部屋にはたくさんの人たちがいて、その人たちに誕生日を祝われたり美味しいご飯を食べたりしたのはまた別の話である。
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