潮崎 晶

作者様の描きたい世界がそこにある大長編SF
 未完結の現状ですがレビューさせて頂きます。  まず、壮大な世界観が綿密に敷かれた、宇宙版大河ドラマというのが最大の印象です。  同じ惑星を祖とする四種族と、それを取り巻く幾つかの種族によって形成された、恒星間国家群。様々な惑星に進出し、居住圏を広げて来た彼等ですが、どの惑星も一長一短があり、さらなる新世界を求める動きは止んでいません。そんな時に発見された新たな惑星“太古の地球”。青く美しいその星に魅せられた四種族は、新天地到達を目指してしのぎを削り始めます。  本作の特徴は細部にまで考えられた、特異なヒエラルキーに基づく世界設定にあるでしょう。あらゆる種族それぞれに与えられた、身体特性、民族性、社会構造、歴史文化と風習、他種族に対する考え方。そして彼等が住んでいる惑星に関する、様々な情報などの全てが、事細かに造られています。  そして登場人物も多数。それぞれの種族のキャラを主人公として、章ごとに分かれた、オムニバス形式で物語が進められており、上記の精緻な世界設定を下敷きにした話の展開が、各エピソードに深みを与えているのは言うまでもありません。  時には争い、時には手を組み、地球を目指すために、四種族が紆余曲折を繰り返す第一部。さらに第七章から開始される第二部では、四種族による宇宙開拓の歴史が紐解かれ始め、星の海を渡る宇宙叙事詩が語られていきます。  その一方で他の方のご意見にもある通り、大量のカタカナ表記された固有名詞が目立ち、煩雑な印象を受けるのも確かです。そしてこれもまた、他の方の意見にある通りカタカナ表記の多さは、SFやファンタジージャンルにおいて宿命的なものであり、本作においては世界観や人物設定が記された、“設定集”が別個に書かれていますので、上手く活用したいところです。  ともすればこのように壮大なストーリーは、長期にわたって執筆して行く間に、展開に矛盾が生じて、破綻してしまう場合も少なくありません。しかしながら上記に挙げた緻密な設定は、本作にとって特筆すべきものであり、完結までの確かな道標となるものに違いありません。それは偏に作者様の目の前に、描きたい世界がしっかりと広がっているからに他なく、どのような結末を迎えるのか、その終着点を期待したいと思わせてくれるものです。
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ありがとうございます。こういう感想を送られるのは私にとって感無量としか言いようがありません。 潮崎さんは作者である私の狙いをそのままに的確に解釈しているようで、大変嬉しいです。綿密と言えば聞こえはいいですが、一方で登場人物の多さと重層的な世界観の構成により、この作品複雑でついていけないという読者もいたわけで、潮崎さんの場合はノヴァルナを執筆されているだけあって、そこら辺は数あるSF小説の一つの形として苦もなく受け止められたようで、そこはさすがだなと思いました。要は読書経験豊富で映画アニメもたくさん見ておられる頭のいい人ということになりましょうか。潮崎さんの場合、そこは言わずもがなですが。
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