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歌わぬ小鳥
みか
2024/5/15 17:30
黒煙と焼失と残るもの
暗い小説はどこまでやればいいのかわからなくなる私が感想を書いちゃいますよ! 親子や男女のドラマは、カビが生えた一般論や欺瞞に満ちた善悪の価値判断基準をやすやすと超越してしまいます。 現場で起こっていることは凄絶の一言につき、その場にいたら自然と否でもわかるものです。 …………物語には二人の女性が登場します。 その内の一人が過去の隠蔽と証拠の隠滅と人生の目的を確実なものとするため、隣りにいる娘を手に掛けるところが出色(しゅっしょく)!! キーパーソン(キーバード?)である小鳥の存在はセピア調に統一されている物語へ異彩を放つ役割を担っており、彼女には憐憫の情がまったくなかったわけではないのが読み取れます。 彼女の後ろめたさから生まれた無言の叫びを片割れが焼死した小鳥(娘)の鳴き(泣き)声ととらえたら、このままこの子が成長していったとしても、自らと同様な状態へと陥ってしまうのは相違ない…しのびない……との憐れみが生じ、さらにいえば…もしかすると……この子はあるとき、真相に気付いてしまうのでは……との恐れもわいてきてしまう。 火災の後に会えなくなった友人はまだ生存しており、曲がりなりにも夢を叶えたように見受けられるのと比較して、目的が未達成のままである自分の姿……ここが浮かび出てくるのと同時に前述した理由から、良心の呵責との間で板挟みとなってしまい、たった一つの冴えたやり方として娘を亡き者にしようと、真っ直ぐ凶行におよんだ彼女の姿は圧巻です。 計画的な行為とは言い難いため、この後に彼女は茫然自失となり自死を選ぶか、娘を迎えに来た彼も道連れにしての無理心中をはかった可能性も否定できません。 「これはこうあるべきだ、これはこうでなければならない」などといった思想では、上手に説明できない世界がどんな環境にもあります。 彼女の行動を自身への愛情や芽生えた親心といったら、それはその通りでしょう。 どの方向へ進んで、どの形を取るかによって愛は別の呼び名を与えられて区別され、その呼び名を付けるのは、あろうことか愛の向かう先がいつも揺れ動く人間なのです。
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いぬいりんこ
5/15 20:07
うわー!!!!!!!!!! 感激です。涙でました。読者によって作品は初めてその世界に息づくのですね。 秀逸なコメントを、ありがとうございました。 "どの方向へ進んで、どの形を取るかによって愛は別の呼び名を与えられて区別され、その呼び名を付けるのは、あろうことか愛の向かう先がいつも揺れ動く人間なのです。" この部分が、心に沁みます。 再度御礼!ありがとうございます。
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みか
5/15 20:55
えへへっ、心の琴線に触れてもらえて嬉しいです♪ 実は…………火災というものは私も経験しているんです。 具体的には、隣家の火事に私の自宅も巻き込まれ、延焼したんです。 2020年の前のことでしたね。あれは風の強い日でした。 その際に私は化学建材が燃えて生ずる危険な黒煙に巻かれて夜間、救急車で総合病院へ搬送されました。救急車には生まれて初めて乗りました。 火事に遭った、といっても燃え盛る火炎や高熱によって焼死してしまう…というよりは発生する有毒な煙により、呼吸困難となり気を失って、そのまま……となってしまう方が多いんです。 あのとき、私が死亡してしまったら……エブリスタを通じて、いぬい様や他の作家
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