秋月晶

陰の気に触れ、縁を感じて。
『山で出会った彼女のこと』に寄せて、レビューを記します。 ※多くのコトを書きたいので、ですますの丁寧語は廃していきます。 本作は、作者・月形みちるさんの著作『忘れられない日のこと』の続編だが、独立した短編としてアンソロジーを編んでも楽しさを感じられるものとなっている。 主人公は、占い師・理乃。 とても明るく気さくな性格で、作者・月形さんの波動に近く、また、感じ取る力やそれを表現する台詞回しも、その波動に近い、柔らかな印象を抱かせるキャラクターだ。 物語は、占いと山という奇妙な結びつけから始まり、陽の気を孕みながら楽しげに展開していく。 私も占いは信じたい人間の一人だが、平安時代のように頼りきりというわけではない。 しかし、時代とともに重量を変え、手法を万華鏡のように変え、人に対して寄り添ってきた占いほど、人間のこころの友達はいなかったのではなかろうか。 占い師と言えば、ポジティブなイメージとネガティブなイメージが人それぞれにあると思う。 これは私の主観だが、ネガティブイメージを持つ人は、何かに裏切られ、猜疑的な構えになっている人かもしれない。 本来、正当な占い師は、人を幸せにするサポーターだ。 だから、サポーターを信じられなくなるほどの猜疑心ほど、占いによって霧に帰すべきものとも言える。 本作の作中で、理乃が語った台詞のそれぞれは、光をまとうものだった。 人により道のりが違っても、少なからず経験しただろう事柄について、理乃は独自の論法を使い、セカンドオピニオンぐらいに利用してほしいとも言っている。 これこそ、占いが時代の変遷とともに変化し、馴染みやすいものへ進化した証の言葉だろう。 そしてこの台詞を合図に、作品は陽の気から陰の気へと転調していく。詳細については、作品のもつ起伏を感じながらご覧いただけたらと添えておきたい。 陰の気と言うと、これもネガティブイメージを抱くかもしれないが、夜空に浮かぶ美しい月も、陰陽思想では陰をさす。 作品のラストでは、その陰の気が柔らかな月光のようでもあり、内なる意識を癒やしてくれるはずだ。 『一樹の陰、一河の流れも他生の縁』 (知らぬ者同士が雨を避け木陰に身を寄せ合うも、同じ川の水を汲んで飲むも、前世からの縁) という言葉もある。 占い師との出会いも縁。 そう思うと、理乃というキャラクターが格別に魅力的に見えるだろう。
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晶さん 素敵なレビューありがとうございます✨ 丁寧に読み込んでいただき感無量です(ノД`)・゜・。 占いは、成り立ちから見たら確かに、国の未来を見るものだったり、当てることが大事な予言的な側面もありましたよね。 現在は現在で、ニーズに合わせて、個人にフォーカスした、自分を知り、周りの人を知るためのガイドみたいな使い方もあって、そんな風に人の見方を広げるのにいいものだなと思います♪ 占いを利用したいと思う方が、ニーズに合った占い師さんに出会えますように。 陰陽は、表裏一体でどちらもなくてはならないものと言われますね。光も闇も、片方があるから片方が存在できる。 感受性深く拙作の陰陽にも触れた
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