ながうち

 甲高く耳を抉られる鳴き声が聞こえてくる分にはいいものの、持ち主が全く正体を現さない限りは何もできないので、ユナはとりあえず巨大な動物が現れるのを待った。  姿、形、大きさといったものはよくわからないが、おそらく中学生の自分と比べてかなり大きいであろうことをユナは察知した。攻撃しようにも肉弾戦じゃ勝てないのである。だからといって知恵や創意工夫で力に立ち向かったところで勝てないということは薄々理解しているのだが。  犯人の大きさからすれば間違いなく歩くだけで木々が崩壊していくのだが、周囲から木々が壊れる音は聞こえないし木々が壊れる風景も 見当たらないので、おそらく活動していないのだろう。  上記の事実が、不快音調査係のユナをより苦しめさせるのである。  不快音は定期的に聞こえるものの、ただ音が聞こえるだけで主が姿を現さないこの状況がもどかしくて仕方ないのである。  周囲の老人は不快音に耐えかねて自宅へと帰って行ったが、ユナは老人と違って不快音に立ち向かわなければならない立場の人間である。逃げているひまなどないのだ。

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