秋月晶

洗われるような優しさのセラピー。
『ブラックポスト』シリーズの既投稿3作品に寄せて、レビューを記します。 ※多くのコトを書きたいので、ですますの丁寧語は廃していきます。 常に会って話せる人というのは、実のところそう多くはない。 信頼し心を預けられる人、家族や友人、先輩や先生といった存在は、時を経るにつれて物理的に離れてしまうことが多いものだ。 逆に苦手な人、嫌いな人、職場関連や相容れぬ人ほど物理的に近く頻繁に会うということも多くあるだろう。 近況報告、日々の然々、想いの吐露をしたい相手がいるとき、物理的に離れた相手と話すには、かつて手紙が主手段だった。 近年は郵便の力が衰えつつあるが、歴史を見れば、手紙というツールがいかに重要視されていたか分かる。 この『ブラックポスト』シリーズは、ファンタジーとヒューマンドラマの融合体で、土台に不可思議な現象・ブラックポストを置き、その上に上質なヒューマンドラマを乗せた連作短編となっている。 恋愛や友情、絆、そして少しずつ明かされていく肝の部分。 1作目から3作目までの間隔によらず、作者・月形みちるさんの基礎的な優しさ、誠意、思い遣りといった根幹は揺るぎなく、ライフワークにしても良いのでは、と読み手に思わせる温みが感じられる。 1作目の主人公・美希。 2作目の主人公・園乃。 3作目は交差する二人の主人公・清香と春雪。 現段階で明らかにされていない部分の期待値を込めれば、総合的に長編となる予感もあり、物語性の高さも相まって、記憶に焼きつく作品となる過程を確かにしている。 月形みちるさんの感性は、このシリーズに力を持たせ、時に感動、時には悲哀、時には抱擁感と、小説の形式にしたセラピー的な安らぎをもたらしてくれる。 それが人の絆であり、人の心の温度だと描出するような筆致は、圧がなく柔らかく、そしてそれこそが、月形作品が持つ優しさの薫りなんだろうと感じられた。 ノーベル平和賞を受賞したマザー・テレサには、こういう名言がある。 『大切なことはどれだけたくさんのことをしたかではなく、どれだけ心をこめたかです。』 月形みちるさんの『ブラックポスト』シリーズの軸にある、『心をこめて手紙を書く』行為からは、百万の行動よりも崇高な願いを読み取ることができるだろう。 続編を楽しみに待ちながら、本シリーズが広く読まれ愛されることを願いたい。 質感のある優しさは温かいものだ。
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晶さん もったいないくらいのレビューをありがとうございます<(_ _*)> なんとお礼を申し上げていいやら、涙で前が見えません(T^T) 深く心に刻み、大切にこのシリーズを続けていくことでお返しできたら。 さらに楽しんでもらえるよう頑張ります✨
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