CM( --)ノノ * * * 「ノギドワぁ……なんであたしを置いて行こうとしたんだよぉ……。 この島でずっと一緒だって約束したくせにぃ……」 大粒の涙を落とす女は、胸に大きなガラス瓶を抱えていた。 瓶の中で液体に浸かっているものは、ノギドワの首であった。 * * * 「俺『あるめろ』始まった時からフォロワー。 お前ら島に来てマジビ。 俺、お前、助ける。 そしたらお前、俺、日本連れてく。 正当なトレード、だましなし」 ノギドワはアルマをじっと見つめた。 * * * リワンが咆哮を上げる。 大きく開いたその口の中には、太く鋭い四本の犬歯が輝いた。 リワンの右手が大きく膨れ上がり、指先から長い鉤爪が伸びる。 「ビジャ……ではないのか?」 「彼女のミヌと獣のミヌが……絡み合って一体化している……」 * * * 「夢は、かわいいお嫁さん。 あたしはかわいくなりたいの。 野蛮な獣になんてなりたくないの」 返り血で真っ赤に染まった服を海に飛び込んで洗い流し、飲み込んだ肉を全部吐き出しながら、あたしは毎日泣いていた。 「イヤだ。 こんなあたしは嫌い。 あたしを獣だと気付かせたミヌが嫌い。 あたしを獣にしたヴェダが嫌い。 こんな島、嫌い」 * * * 「諦めるな! 行くんだ! 新しい世界へ! 連れて行ってくれ!」 ノギドワがナガの脇腹に拳を打ち付ける。 「夢見てんじゃねぇ! 俺たちに新しい世界なんかねぇんだ!!」 ナガがノギドワの頭を床に押し付けた。 「じゃあ俺たちはみんな一生あの島で、子供も孫もその孫もヴェダの便利な道具かよ!? 俺たちは何のために生きてんだ!? この広い世界で!!」 * * *  「大丈夫、獣じゃない。 リワンはリワンだ。 いや……獣でもいいか。 いいよ、リワンはきっと本当は獣なんだ。 だけどリワンはリワンだから、それでもいいんだ。 リワンは、獣でも、同時にかわいいお嫁さんになればいいんだよ」 ノギドワはそっとリワンに花冠をかぶせた。 「あぁ、ノギドワ……あたし、獣でもいいの……? そうか……ありがとう、ノギドワ。 あたし、もう泣かないよ。 だから、ずっと一緒にいてね……」 * * * 禁忌を犯した僕らは、見えないものが見えるようになって、死ぬ。 https://estar.jp/novels/26166798
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