【コメント】

機々械々

アイザック・アシモフのロボット三原則をモチーフに、これが及ばなくなったロボットの成長を描く物語。SF作品ということで抵抗を感じる方もいるでしょうが、親しみやすい文体で作られており読みやすい作風です。さて、この物語の主軸は、本来ロボットの思考機能に埋め込まれ制御されているはずの三原則が影響力をなくし、ロボットが人に紛れてしまっている世界を描いています。さながら「アンドロイドは電気羊の夢を見るか？」を彷彿とさせますが、アンディーと違ってこの作品のロボットは感情によって人を守り、感情によって冒頭では人を殺めてしまうという演出がなされています。そしてなにより主張されているのがロボットの“変身”という戦闘形態への移行アイデアで、不思議と日曜朝の戦隊モノの雰囲気を交えています。僕個人としてはもっともっと重圧な世界を強調して欲しいと感じますが、このような視点のSFもまた面白いのかなと思いました。小説として言及するなら、視点が統一されていないことから場の理解に何度か読み直さなければいけない点が、この作品の読みやすさという長所の足を引っ張っているように思います。

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