潜水艦7号

相変わらずの切れ味と毒味
例えば単に仏像と言っても慶派のように極めて精緻な造形を持つものもあれば、ざっくりと切り出しただけという円空仏の護法神もまた仏像といえます。しかし我々はその荒々しさと簡素な中に確かな仏性を見るのです。そこに必要なのは精緻さではなく本質を示すことなのだと我々に教えてくれるのです。 本作もまたこれと同じように、作者による徹底的なまでの「削ぎ落とし」によって成り立っているといえるのではないでしょうか。 タイトルの「某(ナニガシ)」も、それが何を意味しているのか想像をつけることは十分に可能であり、登場人物のフタバがどういう境遇にあるのかも容易に理解できます。何故なら我々はあの日の傷をまだ癒せてはいないのだから。 リーダビリティを完全に置き去りにして己の作品の本質に対して一切妥協せず貫くスタイルは、今回もまた健在といえるでしょう。我々は作者の放つおどろおどろしいのまでに甘美な毒の味を堪能することになるのです。 何一つ解決策がないときに、その代替にどのような手段を用いようとも、そこに「真の正しさ」も「真の過ち」もない。 卓越した表現力とその痺れるまでの毒の味を、是非とも堪能して欲しいと思える作品です。
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