天川 青大

素晴らしい! excellent!  短編小説として完璧ですね。 この作品を2回、読みました。短編の作品にレビューを付ける時には、大抵そうしています。 傑作です。傑作とは、ずば抜けて優れた作品の事です。 【マトリョーシカ】とは何だろう? 調べました。 ロシアの民芸品で、人形の中に人形が仕込まれ、その人形の中に又、人形が仕込まれて、まるで玉ねぎのように人形が現れる、凝った作りの楽しい民芸品なのですね。 さて物語は、落ちぶれた貴族の成り行きです。 借金のカタに、邸宅も絵画も家具も食器までも持ち去られ、残された姉妹は家を追われます。 その経緯が迫真の描写力で記されています。 緻密に組み立てられた構成は、結末に向けての計算され尽くした配置です。 つまり無駄のない表現なのです。この部分は、有っても無くても良いではなく、物語の主旨を伝える為に必要な記述しかされていないのです。 贅肉を削ぎ落として、無為な記述をしない。推敲を重ねなければ、こうはなりません。これこそ文学。これこそ芸術です。 芸術性豊かな、その表現力は、僕などが言及するまでもなく読者は感じ取る筈ですが。 欲に絡まる人間の醜悪が描かれますが、最後にどんでん返しの結末で、爽やかな読後感をもたらします。 可哀想な筈の姉妹が、力強く明るい未来を予感させるからです。 これは見事です。悪人の裏をかいて、してやったりの、善人の知恵の勝利です。爽快です。 未読の方は、ぜひ、ご一読を。 お薦めします。 併せて、小説の役割を熟知され、記述の力を遺憾なく発揮された作者様に尊敬の意を表します。   平成24年12月23日
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マジシャンさん 拙作へのご高覧及びレビューどうもありがとうございます。 そんなに高く評価していただいて恐縮です。 「作者である自分がくだくだしく全てを説明するのではなく、読んだ方が行間を読み取って想像できるような文章を書きたい」と常々思っていますので、拙作でそれが出来ていれば書き手としてもう言うことはありません。 本編では二人の姉妹たちの行く末を直接には描いていませんが、マトリョーシカの奥の奥を探る様に、読まれた方に色々と想像していただきたいところです。
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