【コメント】

となりのエトランゼ

小説とは何かを、改めて理解させてくれる素晴らしい作品です。意表をつく設定があります。流麗な展開に、自然で小気味よいセリフ回し、キャラも立っている。でも、揺さんの作品に通底しているのは、包み込まれる優しさなのです。同じことを言われても、反発したくなる人と、つい頷いてしまう人がいる。話の中身以上に大切なのは、話者の人柄なのですね。小説も同じでしょう。技巧があっても、豊かな発想力を見せても、馴染めない作品はあります。お喋りと違って小説の場合、文章の良し悪しは決定的に響いてしまいます。文体と内容を兼ね備え、さらに雰囲気を醸し出せる作品は、なかなか見当たらないものです。揺さんの文体は簡潔で、しかも行間に優しさが漂っている。小気味よく鮮やかであるのに、柔らかくしなやかです。このように分解しないと、見過ごしてしまうくらい、自然で滑らかなのです。文は人なりですね。

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