FACTS

夜道に明るい灯火が点々と並び、寒空の下、たくさんの人たちがどこか嬉しそうな顔をしながら賑やかに歩いていく様子を遠くから眺めながら、その子は魔女に聞いたのでした。 「あの人たちは、何をしているの?」 魔女は夜色の目を優しく細めて、柔らかい笑顔を浮かべて言いました。 「新年を祝っているのよ」 「どうして?」 「新しい時が来たからよ。古い時が終わって、始まりの時が来たの。始まりは、喜ばしいものなのよ」 「じゃあ、古い時は悪いものなの?」 その子は泣きそうな顔で魔女を見つめました。月明かりがその子の瞳を照らし出していたので、涙で潤んだ瞳はきらきらと輝きました。 「『終わり』は嫌われるの?」 かすれた、震える声でそう言ってから、その子は魔女の黒いドレスの裾をギュッと掴んで、すがるような目で魔女を見上げました。 「いいえ」 魔女は、そっとその子の髪を撫でます。 「『終わり』があるから『始まり』があるの。だから、古いものも終わりも、悪いものではないのよ」 魔女の言葉に、その子はほっとした顔になって、それから、はぁっと空中に白い息を吐きだしました。 「さっきから、飽きもせず、そうやって息を吐いているけど、何をしているの?」 不思議そうに魔女が尋ねると、その子は照れくさそうに小さく笑いました。 「これさ、キラキラ輝いて、とってもキレイなんだ。何度か吐き出して、上手く形になったら、これをネックレスにして、魔女にあげるよ」 魔女はきょとんとして、それから真剣な顔で、その子を見つめて言ったのでした。 「たとえ、『終わり』が全ての人間から嫌われたって――」 魔女の目は、確かにその子を見ていましたが、どこかさらに遠い誰かを見ているようでもありました。 「『始まり』が『終わり』を好きでいてくれるから、嫌われたって、なんてことはないのよ。 ねえ。あんたがこの先、どんな選択をして、何と戦って、どんなことになったとしても――、私はずっと、あんたを『見守って』いるのよ」 明けましておめでとうございます。 「魔女」と「その子」の話を書きたいのですが、ネタが固まっておりません。 で、とりあえず、ちょっと童話調に書いてみました(笑)。 「終わり」とか「始まり」とか「維持」とか考えるの大好きだったなあ。 運命の三女神とか、ヒンドゥーの三最高神とか、大好きなネタでした(笑)。
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