天陰村雲

 彼は、幻想に恋い焦がれ、史実ではないお伽噺に真を求めた。 神代  子供でも知っている、あるいは子供だからこそ知っている魔法の光が彩る世の中を、〝復活〟させようと夢見た。  そんなものはない──と、幾人もの開拓者が嘲笑う。  初めから存在しないものを〝復活〟などとは呼べないから──今あるものが全てで有り、これ以上は無いのだから──それでも彼は、それを有ると信じて、探し続けた。  労苦は疲弊した時に輝く。ある日、ある鉱脈から不思議な色を放つ結晶体が掘り出された。  しかし、溶かすことも出来なければ叩いて伸ばすことも出来ず、削ることも出来ないソレは価値が無いとされ、一旦は廃棄されたものの、それに彼が目を付け、大金をはたいてかき集め、研究した。

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