【コメント】

プリンと懐中時計

予想以上に面白かったです。何より読んでいて退屈する場面がない所に驚きました。設定はシンプルでわかりやすく、キャラクターの語り口調（特にフラマ）に癖があって覚えやすいと思いました。冒頭の人物紹介と世界地図は必要ないと思う位、主人公の動きに合わせて作品世界の仕組みや、キャラクターの特徴をピンポイントで教えてくれる地の文のおかげで、混乱する事なくストーリーに入っていけました。まるでオンラインＲＰＧの世界へ出かけるような感覚で楽しめました。個人的にストーリーと設定は、さほど新しさを感じません。しかし、文章が正式な文法から軽く外れているのに、日本語として破綻していない所が新しいと感じました。『バターンと倒れた。』『そのままベッドへダーイブ。』等々。また料理の描写も細かく、シフォンケーキの作り方や、半熟ハムエッグをトーストに乗せて食べる場面等、ジブリ作品を思わせる日常生活も丁寧に描かれていて、印象的でした。作者が足を地面にしっかり付けながらも、面白いと思う事柄を次々とつなげているように感じました。星みなみさんが仰った「既成の古い文法にとらわれない表現」を垣間見たように思います。ご紹介ありがとうございました。