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芥川賞受賞の、『abさんご』読了。 知人に、 「立ち読みしたけど、読みにくくて買わなかったよ。 小説書いてる者(私のこと)としては気になるでしょう? 読んだら感想聞かせてね」 と言われ、文藝春秋購入。 受賞は話題性だと思ってたし、エログロあれば衝撃的、みたいな最近?の純文学の在り方も嫌だったので、正直、あまり芥川賞には興味なかったのですが。 ……読んで、泣いちゃったじゃないか、ちくしょう。 あの構成と文章のリズムは反則だ。 読み始めでうるっときて、途中で切なくなって、ラストでうるうるでした。 …私も年を取ったのか…(遠い目) 正直、古臭いです(笑) 昔の児童文学読んでるような気持ちになりました(笑) あるいは、辞書なしで読む古典。 変なとこ平仮名で、スラスラと読めないとこもあるんですが、これまた宮澤賢治でも読んでるかのような懐かしい気分に(笑) 雰囲気としては、小川未明っぽいな、というのが私の感想です。 ふわふわしてて、夢の中みたいで、全てが影か幻みたいで、それでいてリアルというか。 ファンタジーというか、メルヘンチック? まあ、小川未明は、ラストのラストでたたき落としてくれたりするけど。 理解出来たのかと聞かれたら、理解出来なかったけど。個人的には好きです、こういう作品。 時間視点すらも定まっていないけど、「回想する」って、そんなもんだよな、って思う。 基本、幼児のような視点で語られていくのですが、これがどこか物悲しくて、でもキラキラ輝いてるんです。 ああ、子供のときの目線て、こんなだったなー。 この話は、イメージで読むのでいいんでなかろか。 子供が言葉を知らなくても、しっかりと世界を見ているように。 文藝春秋に載ってた、村上龍の選評がよかったです。 新人の優れた作品には、未完成ながらもそれを補ってなお余りあるエネルギーがある。 しかし、abさんごは完成されてしまっているので新人賞には相応しくない。 でも、この作品が受賞して、私は反対したにもかかわらず、嬉しかった。 な内容でした。 うん。 「やってはいけない小説の書き方」 の良い見本でした(笑) 型破りもいいとこです(笑) でも、計算されてる。 だから許される。 幼児を内包した老人が、俯瞰して記憶の中の世界を見つめている感じ。その記憶に融合していく読み手。 いいなあ、この感覚。

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