光姫 琥太郎

やりますね。 佐和さん、やりますね! それが、読み終えた直後の素直な感想でした。 ハードビターな大人の恋。やはり大人の恋愛は大人にしか書けないんでしょうねぇ。 詩的、かつ知的な描写に加え、心の内面を抉る少女の感情表現。ストーリー自体は奇抜なものでない反面、こうした細やかな文章がとても印象に残りました。 冒頭の葡萄のくだりや、シャワーを浴びながら思い出す彼の様々な『声』。その辺りの表現が特に秀逸でしたね。 また、短編(掌編)は少ない言葉数でより多くのイマジネーションを読者に与えることが重要になってきます。 それを見事に表現してみせたのがこの一文。 『腕に残してしまった傷痕は、どんな言い訳をされるのだろう。』 この文章には彼が、“誰に”言い訳をするのかまでは記述されていません。 上司なのか、友達なのか、恋人なのか、あるいは妻か―… 読者はここで、自然と様々な想像をしてしまうでしょう。 これがこの作品最大のマジックワードですね。思わずおぉ!と唸ってしまいました。 総じて、非常に良質な恋愛作品に仕上がっていると思います。 最後にまた、最初の一言を。 佐和さん、やりますね。

この投稿に対するコメントはありません