室 雛多

読了しました。では早速駄文で感想をつらつらと述べさせていただきたいと思います。 本作『キミとボク』はただの恋愛小説ではなかった。まだ読み始めたばかりの頃だ。私はてっきり樹と恵菜が年の差に苦悩しながらも着実に恋を育んでいくものだと思い込んでいた。今考えると幼稚な判断だ。故に本作の佳境には非常に驚かされた。この場合、いい意味で期待を裏切られたと言うのが相応しいだろう。 また本作の特徴としては多数の登場人物の視点が用いられているというものがある。職業も性別も歳も感性も違う彼らだが、全員樹を中心として作中で重要な役割を担っている。決して世界は二人で動いていない。裏方にも恋のために努力した人が居たのだと認識させられた。まったく、作中にイラストはないが、さぞかし樹は色男なことだろう。 しかし、これだけ多くの人物が登場しながらも報われる者はいない。想い続けることしかできなかった者、憧れるしかなかった者、求めたが報われなかった者、自分を偽っても失恋した者。誰一人として自分の恋を掴んだ者は居ないのだ。恋愛小説でありながらも、誰一人報われないというのも可笑しなものだ。 それでも実際恋とはそういうものなのだろう。初恋で報われる者もいるだろう。何度恋しても報われない者もいるだろう。そういうものだ。優しいだけが恋ではないのだ。本作はそう私に伝えてくれた。 結局樹は着実に年齢を重ね大人になってしまう。彼は幸せだったろうか。どれだけ長く長く想い続けても初恋が実ることはなかった。会えても二人の間には距離という壁が無慈悲にもある。故に諦めるしかなかった。 最後まで最後まで最後まで二人の幸せを望んでも叶わない。そのまま物語は佳境へ。初恋は終わり、彼の胸に遺されただけになってしまった。それでも彼は最後まで大切に彼女との欠片を探し続ける。なんでも出来そうなのに不器用で、一途で、弱虫な彼がとても愛しかった。 この物語は決してハッピーエンドとは言えない。だが、それでも最後に彼は胸が満たされたに違いない。どれだけ離れていても、報われなくても、それでも確かに二人は恋をし、想いを交わしたのだから。 当たり前だが感動した。素晴らしい物語をありがとう。
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丁寧なレビューありがとうございます(*^-^) エブリスタで最初に書いた作品だったので「ケータイ小説らしくない」にこだわって、「願望を投影させる」とか「これでもかこれでもかの試練」を排した結果、読み方によっては鬱ENDな作品になってしまいました(´▽`)ノ その反動で、現在、明るい央同路線を目指し、迷走しています(*^▽^*)ゞ 細かいところまでお気づきくださり、感謝っ感謝です!

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