東雲健太郎

 オレは夢を見る。  どう足掻いても叶うことのない夢を見る。ありふれた、陳腐で、だけど誰もが望む夢を見る。  それは果てしなく遠く、忘却の水平線に沈み行く世界の願い。沈み、浮かんで、沈み、浮かんで――無情な音色を響かせながら沈んでいく。 「さぁ、君は何を望む?」  曇天の空が哭くように降りだした雨粒が、オレと君を濡らしていく。  どこまでも、いつまでも、渇きは無い。潤いは無い。水を含んだ土砂に似た違和感だけが、オレと君を包みこむ。 「オレは君が好きだ。だから、一つだけ願いを言ってくれ」  叶えてあげるから。  オレは君の夢を叶えてあげられるから。そうするしか他に道は無いから。世界の廻間に揺れる君の想いを救ってあげられるから。 「どうした? 願いを言ってくれ」 「――――」  君は答えた。  なにもない、と。  ただ幸せを願うオレに対し、君は微笑んで言の葉を紡いだ。世界の廻間に囚われてるのに、君は最後まで世界の願いを己の想いと同化させた。  平和にしてくれ、と。 「それが、君の想い」  ああ、解っていた。  オレには解っていたんだ。  夢を見ることの儚さを。  人の為と偽ることを。  己の心にある忌まわしさを。 「わかった」  オレは夢を見る。  果てしなく遠い夢を見る。  何千年掛かろうとも。  オレはまだ、夢を見続けている。
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「はやく起きなさい! ご飯できてるわよ!」  もう少しだけ、 「遅刻するわよ!」  あれ、今日て休日では? 「寝ぼけてんじゃないわよ! 今日は三月五日よ」  な、な、なんだってーー!? 「いってきますw」

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