東雲健太郎

「ふふふふーん」 「ご機嫌だな、シェリア」 「あー、ガイルじゃない。相変わらず辛気臭い顔してるわね。何かあったわけ?」 「いや、特には。ギルド長もそれなりに仕事しているしな」 「ふーん、まぁ私には関係ないわね」 「小言を吐きたいのだが、聞くかい?」 「無理な相談よ」 「だろうな。しかし、珍しく朝から機嫌がよろしいようだが、お前こそ何かあったのか?」 「失礼ね、私が低血圧だとでも言いたいの?」 「ノーコメントだ」 「ふん、確かに今まではイライラすることが多かったけど、今日からはそんなこと無いわよ」 「ほう、それは喜ばしいな」 「もうね、最高の気分なのよ! アレよ、アレ。麻薬とか薬物とかにハマる人間の気持ちが解る気がするわ!」 「ほう、それはそれは。……は?」 「天にも昇る心地よさ! 好きな男と寝た時のような幸福感! ああ、今まで女でいてこれ程幸せだったことはないわッ!」 「…………いや、ちょっと待て」 「何よ、例えアンタでも私のこの気持ちに水を差したら承知しないわよ」 「お前、まさか本気で薬物に手を出していないだろうな?」 「はぁ? するわけないでしょ、この私が。さっきのは例えよ、比喩よ」 「そ、そうか。安心した。しかし意外だな、お前にも好きな男がいたのだな」 「当たり前じゃない。まだ二十代の乙女よ、私は。とは言っても、生まれてからまだ一人しか好きな男は出来てないけどねー」 「ほう、それはやはり年下なのかな?」 「ビンゴ! 正解よ、ガイル」 「あまり人の好みにケチは付けたくないが、国によっては犯罪だからな」 「大丈夫よ。向こうは知らないし」 「…………何、だと?」 「だから、添い寝とかもアベルに気付かれないようにしてたし」 「それは犯罪だ! そもそもアベルなのか!?」 「大声は止めてよね。うるさい。何よ、アベルだと何かいけないのかしら?」 「いや、そういうわけではないが」 「安心しなさい。直接、アベルの口を奪ったことはないから」 「直接……?」 「ああ、言ってなかったわね。私がこれから先、朝がハッピーになる理由はね」 「……聞きたくないのだが」 「アベルの使用済み歯ブラシで歯を磨くからよ(ああああ、美味しいィいいいい!!)」 「――――変態が!」 「あら、誉めてくれてありがとう」
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