N.k

 雨の日に、此処に佇む私を気遣ってくれたのは、あなただけでした。 「寒くない?」  聞かれても、口を持たぬ私には答える術がありません。懸命に、大丈夫、とこの躯を揺らしても、あなたには届きません。 「学校に遅れるから、またね」  手を振ってくれるあなたに、応える事ができません。其が、もどかしく、哀しくもあるのです。  雨の日は、元気になれます。降り注ぐ光は、私を励ましてくれます。  けれど、私の命はあとどれだけ、存えるのでしょう。  あなたに会えるのなら、力の限り咲き続けようと思うのです。  あなたに出会わなければ、私はただ、春の訪れに目を覚まし、短い期間、虚ろに空を見上げ、ただ朽ちていくのを待つだけでした。  私は今、心から生きたいと思うのです。  例え、傷ついて血を流しても、此処に在り続けたいと思うのです。  夕刻、あなたは来た道を戻ってきます。
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