僕は一度たりとも太陽を見たことが無い。  なぜなら、太陽が墜落するからだ。きっと太陽を見たことなんて何度でもあるのだろう。それこそ生きているのだから、数えきれない程に。  今だって僕は舗装された固い地面の上に立ち、空を見上げ、黒く濁った雲の向こう、おそらく太陽があるだろう場所を向いている。あの負に満ちたかのような色をした分厚い雲が途切れ、姿を現す太陽の姿を待ち望んでいる。    後数時間もすれば風に流され雲は姿を消し去り、太陽が姿を現すのだろう。だが僕はその太陽の姿を見ても、それが太陽であると認識できないかもしれない。    僕の知っている太陽は光だ。白く赤く力強く、何物をも寄

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