エブリスタ
さがす
本棚
通知
メニュー
返信コメント
明島 御影
2022/7/27 22:53
蒸気機関車を模したライドが、ゆっくりと動き出す。 前に、後ろに。揺れとスピードに比例して、乗客の悲鳴のような歓声も大きくなる。リンとクリスも、都市伝説などすっかり忘れ、汽車のスイングにあわせて声を上げた。 ライドの最高到達点が、徐々に上がっていく。 折り返すその一瞬、訪れる速度ゼロ。身を包む浮遊感が、興奮を加速させる。 何度目かの、前方へのスイング。 今までで最も高い到達点で、リンは叫ぶために息を吸い。 その瞬間、世界の速度がゼロになった。 揺り戻るはずのライドが、周囲の歓声が、自動で色を変える照明が、リンの顔周りで広がった彼女の髪が──リンの思考以外のすべてが静止する
いいね
コメント
0/1000 文字
投稿