そこからは、座席から(安全バーは動かなかった)の観望会となった。 「わし星雲よ! 暗黒星雲の柱が見える。しかも動いてる!」 「銀河団だ──リン、向こうで銀河が衝突してる!」 「土星がこんなに大きく見える! ああ、私たち、宇宙のどの領域にいるの?」 「肉眼で見る宇宙がこんなに鮮やかって、見えてる波長がバグってるのか? 」  なまじ天文の知識のある二人は、目に付いた星雲や銀河の名前を、興奮しながら次々と口にした。  汽車は星々の間を進む。やがて、名もなき星が視界の大半を占めるようになった。  輝き。揺らぎ。衝突。誕生と死。そこには星の全てがあり、二人は黙したまま、その姿にただ見とれ、

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