「僕も一度だけここに来たんだ。今の今まで忘れていたよ」 「どうして……」 「両親と久しぶりに出掛ける日で、前日からはしゃいで寝不足だった。興味のないコンサートでも嬉しかったんだ」  六歳になったばかりのゼダには、クラシックコンサートを最後まで楽しむのは難しかっただろう。うとうとしている間に、ゼダの父は急な仕事に出かけてしまった。 「泣いたよ。僕が寝たせいで父は怒って帰ってしまったと思い込んだからね」  かわいそうに思ったゼダの母は、この遊園地に連れて来た。 「正装で遊園地は恥ずかしかったけど、ピエロに風船を貰ったりして楽しかったな」 「でも、何で忘れていたの?」 「その後、こっぴどく父に怒られ

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