① 「久美は分かってない。大変なんだよ、システムを扱うのって。今は大手の給与システムを作っていて、何時に帰れるか分からない」  午後九時。雄太がため息をついて、テーブルを右手で叩いた。私が用意していたカルボナーラとサラダの皿が揺れ、耳障りな音をたてる。 「でも連絡くらいくれたっていいじゃない」 「みんな目の色を変えて仕事をやってるんだ。携帯を取りだして、恋人に『遅れるね』なんてメッセージ送れないよ。年度が変わって俺も役職ついたしさ。グループをまとめないといけない立場なんだ」 「大変なのは分かるけど……久しぶりに会えたのに」    私と雄太は付き合って二年目になる。IT会社勤めで土日休みの彼と、

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