一夜明けて

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死神が、兵の近くを通りかけた時、その兵が隙だらけの死神にめがけて、剣を振り下ろした。 しかし、勿論その剣が死神に触れる事は無く、虚しくも空を切っただけだった。 「ふふ、嬉しいぞ。やはりただの腑抜けばかりでは、無いという事なのだな」 背後から死神の声がした。 兵が後ろを振り向こうとした瞬間、彼の体は二つに分かれ、大量の真紅の液体を放出した。 それを全身に浴びた死神は、小さく笑みを浮かべる。 そして、兵の中へとわざと見える速度で、突っ込んで行った。 兵たちは、死神の姿が見える為、迷う事無く剣を振るう。 しかし、その軌道は決して死神をとらえる事は無い。 ある者は首を斬られ、またある者は袈裟がけに切り裂かれ、ある者は腕を切り落とされた後に鎌の先端で心臓を一突きにされ、殺されていった。 一人、また一人と殺されていく兵士たち。 死神の足もとには、多数の死体が転がっており、おびただしい量の血液が流れている。 そして、体全体に血液を浴びた死神は、月明かりに照らされて、不気味にその姿を残り少ない兵たちに曝していた。 恐怖で委縮している兵たちに対して、死神は逃げてしまわないように、今度は先程とは比べ物にならない速度で、攻撃を仕掛けていく。 勿論、今度は死神の姿など見えるわけも無く、ただただ斬り殺されて逝くだけの、憐れな人形でしか無かった。 そして、最後の一人となった兵は、無論の事恐怖に負けて、死神に背を向け逃げ出した。
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