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「なら私は何でここに居るの」
女は目に涙をためながら、死神に尋ねる。
「そんな簡単な事をわざわざ俺の口から言わせる気なのか?」
溜息をついて、眉をしかめる。
「存在する理由はそれぞれだ。だがそれはただ単に、自分が生き残りたい、という動物的本能にしか過ぎない」
冷たい視線を送り、そう言うジクト。
「違う! そんな事じゃない。私がなぜ今、ここで君にお礼をしなければいけないのか、と言う事です」
声を荒らげてそう言う。
「それこそが、防衛本能と言うものなのだ。次に何かあったとき、また助けてもらおうと言う感情が何処かにある、ただそれだけの話だ」
それを言うと、女は「酷い!」と叫んで走って帰って行った。
その後ろ姿を冷めきった瞳で眺めていた死神は、ふと呟く。
「それとも、繁殖本能から……だったのかな?」
一瞬、ほんの一瞬だけ彼の中に悲しげな色が宿った。
そして、自嘲気味に笑うと、ゆっくりと食料を整理し始めた。
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