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それからひと月ほどの時間が流れた。
あの後暫くの間、死神はただゆっくりと怠惰に過ごした。
何かに興味を持つでも無く、ただゆっくりと世界を眺めていた。
あの一件以来、シーナと名乗る女は現れる事は無かった。
だが、死神はその事に何の感慨も湧いてはいなかった。
長い時を生きてきた中で、感情が狂ってしまっているのだろう。
死神はその事に、既に気が付いていたのだが、これと言って気にする必要が無かったのだ。
復讐に余分な感情を持つ必要性は、全く無いと常々思っているのだ。
もしそこに余計な感情が入れば、復讐の意味を無くしていしまう。
それが嫌なのだ。
「そろそろ、頃合いか……」
ぼろぼろのベットに横たわっていた、死神はそう呟く。
先の襲撃からひと月もたったのだ。
いい加減、貴族達の死神への恐怖も薄らいで来ている筈だ。
それほどに、人々の記憶は薄らぎ易いのだ。
自分には関係は無いと思っている事に関しては、すぐに忘れてしまってしまうのだ。
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